「他には、ありますか?」
また数名の手が上がった。
理玖は一番後ろに座る女子学生をさした。女性にしては背が高そうだが、人形のように整った美しい顔立ちに見えた。
「最近、テレビで取沙汰されているDollにはrulerがいると報道されていますが、rulerについて詳しく知りたいです」
心臓がざわりと嫌な音を立てた。
そのうち、質問が出るだろうと思っていたが、やっぱりきたと思った。
「rulerについては、生態も存在も学会は認めていません。個人の研究家の考察などはありますが、根拠がないものが多く、裏付けがありません。なので、講義で話せるほどの学術的根拠はない概念です」
一度マイクを置いた女子学生が、もう一度マイクを持った。
「学術的根拠はなくてもいいです。WOの世界的権威である向井先生が考えるrulerについて、教えていただきたいです」
なかなか食い下がるな、と思った。
好奇心なのか、勉強熱心なのか。何か話さないと引き下がらなそうな顔をしている。
息を吐き、理玖はマイクを持った。
「あくまで僕個人の見解であって、根拠のない推論になります。今からする話を事実のように他で語るのはやめてください。感想程度に聞いてもらえるなら、話します」<